妖怪せなか濡れ

「はぁぁぁ、お風呂気持ちよかったねぇ」と
入浴剤入りのお風呂で温まり、至福の笑顔のわたし。

 

お風呂から上がって、いつものように自分のお肌のケアと、
まーくんの顔に化粧水と乳液をぬりぬり。

なぜかこれは私の役割になっている。

 

毎日、私が自分の肌にだけ、存分に水分を与え、
たっぷり保湿をした後、顔がやけにつるつるになるのが、
実は羨ましかったらしい。

 

だからといって、まーくんは元々、お肌にしろ髪の毛にしろ、
いわゆる「ケア」には無頓着で自分ではやりたがらない。

 

でも、ツルツルお肌はちょっと気になる・・・という
性格と心情を察し、私がお風呂上がりや朝の洗顔の後に、
忘れなかったときだけ、お肌に栄養を与えている。

 

私がその役目をすっかり忘れていても、
自分から「今日は塗ってくれないの?」と
催促は絶対にしないのが、まーくんの奥ゆかしさでもある。

 

しかし、私が「あ、忘れてた」と気づいて声をかけると、
まーくんは「くぅぅぅー」と顔をしかめ、
うめき声を出しながら怒り出す。

 

正確には、ホントに怒っているのではなく、
怒ったふりをして、笑わせてくれるのだ。

 

そんなやりとりがほぼ毎日のように
朝晩、繰り広げられている。

 

なぜなら毎回、私が自分の肌をツルツルにした時点で、
まーくんの「ケア」を忘れてしまうから。

 

そしてその日もそんなお決まりのやりとりの後、
洗濯したばかりのパジャマに袖を通す。
私の冬のパジャマスタイルは、
Tシャツの上にフリースのパジャマを重ねて着る。

 

フリースだけだと、汗をかいたときに
汗の逃げ場がなくなって痒くなってしまうので、
かならず綿100%のTシャツを素肌とフリースの間に
かませるのが決まりになっているのだ。

 

その日もそのスタイルで、ベッドの背にもたれながら
スマホをいじりっていたが、数分で眠くなってしまった…。

もう、寝ようとした矢先、まーくんが

「ねぇ、かえさん」と私の背中に触れた。

その瞬間、びっくりした声で
「どうしたの!?背中びちゃびちゃだよ!」と言ってきた。

「え?汗かいてないよ。濡れてないよ」と返しつつ、
パジャマの上から背中を触ると本当に濡れている。
しかも中心部分だけがびちゃびちゃ。

 

「おふろ上がって汗かいたんじゃない?」と言われたが、
当の本人は汗をかいているか否か、感覚的にわかっている。

だから汗をかいていないのは充分にわかっていた。

だがしかし・・・
まーくんには「そうかも」と思わせる不思議なパワーがある。
自分よりも私のことをわかっていて、
結果、まーくんの言う通りということが多々(9割がたそうである)。。

 

だから、今回も、知らずに汗をびっちゃりかいていたのか?と
中に着ているTシャツと背中を触ってみる。
とってもサラッとした感触。

 

やはり、私の感覚は鈍ってはいなかった。
ほら、濡れていないじゃないか!

 

・・と自分が正しかった!と悦に入る暇もなく、
フリースだけがびちゃびちゃに濡れているのが
気持ち悪いというか、気味が悪い・・・
ということに気づいてしまった。

 

そこからは、まーくんと
「なぜフリースの背中の中心だけが濡れているのか」の討論が始まった。

「かえさん、濡れたタオルに背中つけてたんじゃない?」
「つけてない!」

「濡れた壁によしかかったんじゃない?」
「してない!」

「やっぱり、濡れたタオルしか考えられない。。」
「違う!」

と押し問答。

 

答えが出ないまま、謎だけが深まる・・。

 

しかし、急に思い出したかのように私。

「たぶん、これ。妖怪せなか濡れの仕業だわ。」

数秒の沈黙の後、

「そっか。妖怪せなか濡れかぁー。それなら仕方ないっか。」と
まーくん受け入れ体勢!

 

すかさず私は

「妖怪せなか濡れは、見た目はお寺の鐘を逆さにしたような
ちょっと錆びた緑の体に、離れたつり目、
小さな手足がついたちょっと厳ついビジュアルだけど、
まだまだ子どもだから口の締まりが悪くてよだれが垂れちゃうの。

今回も私にかまって欲しくて、
「遊んでくれよー」って口を開けたまま
背中に張り付いてきちゃったから、
かえの背中がよだれでびちゃびちゃになったんだよ。」と
堰を切って得意げに説明。

 

すると、まーくん。

 

「え、よだれだったの?うわーまじかぁ、
よだれかぁ。俺だったら嫌だわー」と
きちんと嫌悪感を示してくれた。

 

私のこういう思いつき話にも、
いつも温かく応えてくれ、3歳児を見つめる目で優しく見守るまーくん。

ありがたいね。

 

そして「じゃあ、寝よっか」といつもの平穏な時間に戻った。

 

しかしながら、
本当にフリースの中心だけ濡れていた原因はいまだにわからない。
だから本当に我が家に妖怪せなか濡れが遊びに来たんだと思っておく。

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